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質問(数学の勉強の仕方)

ご質問ありがとうございます。まず最初に、あなたの願いはたいへんまっとうなもので、非常にいいものだと思います。応援します。(続く)

#結城浩に聞いてみよう
https://ask.hyuki.net/q/20210113200430 https://t.co/Llb7jGVxHd

その一方で、回答するのはなかなか難しいです。というのは「これこれこうすれば、あなたの望む理解に達しますよ」や「この本を読めばいいですよ」と一言ではいえないからです。私がお伝えできるのは、どのような心づもりで考えればいいかというくらいでしょうか。

あなたの質問の中でちょっと気に掛かったのは、「青チャートを中心に勉強する」と「解法暗記をして解けるようになる」の関係です。私は青チャートの内容を詳しく知っているわけではありませんが、解法暗記を薦めているのでしょうか。もちろん「これを覚えましょう」という項目はあると思いますが、

たとえば、問題があってそれを解きます。解いた後で解答と解説を読みます。そのような勉強をしますよね。そして、自分の解答と、参考書や問題集の解答とを見比べます。どこが同じで、どこが違うか。違うとしたらなぜ違うのか、自分の解答は正しいか間違いか。そのようなことを考えると思います。

それから解説を読んだときには、自分の考え方と解説での説明文とを比べます。解説ではこういうふうに考えて解いている。自分はこういうふうに考えた。どこが同じで、どこが違うか。自分の考え方の良い点、悪い点。解説に書かれている発想を自分はできたかどうか。そのように考えを進めるでしょう。

そのようにして、
・自分で問題を解こうとしてみる。試行錯誤の末に解答を作ってみる。作れないときでも、どこまで考えたかは押さえておく。
・解答と解説を読んで、自分の考え方や解答と比較して、どういう違いがあるかを考える。自分の考えにまずい部分があれば直し、解説の考えも身につける。

そういった流れで学習を進めるのであれば、どんな参考書を使おうとも、どんな問題集を使おうとも、十分に頭を使い、解法暗記ではない勉強になるのではないかと思います。

ただし、

ただし、それはあくまで理想論であって、解説を読んでも納得できないとか、自分が知りたい「どうしてそんな解法が出てくるのか」とかいった情報が書かれていない可能性は高いですね。あるいは、自分と参考書の解法がまったく違っていて、自分の解答の良し悪しが判断つかないということもあるでしょう。

そのようなときの解決策は、先生に尋ねることになります。自分の解法を先生のところに持っていって、自分の考えを説明し、その良し悪しを先生に教えてもらう。ただしそこでも、先生が言ったからうのみにするのではなく、自分が先生の説明を理解して、納得するまで考え抜く。

そういうことが本当の勉強であると思います。

数学で出てくる公式であれ、概念であれ、解法であれ、何でも同じです。概念であれば「それは何か」という定義を読んでそれを理解する。公式であれば「それが成り立つのはなぜか」とい理由を求めて調べたり考えたりする。

解法であれば、それがどのようなことをやっているかを考えて、使いこなせるようになると共に、どうしたら自分がそれを身につけられるか、どうしたら適切なときにそれを導いたり使ったりできるかを考えます。

ただし、どのようにしても「こんな解法はどうやって思いつくんだ!」みたいなことは置きます。何しろ数学は、ものすごい人数の賢い人たちが、すごい時間を掛けて見つけ出し、洗練させてきたものですから、それと同じことを自分がゼロからできるとは限りません。つまりは、

どこかの段階では「記憶する」部分は必要になります。さまざまな概念も解法も歴史を背負っているわけですから。しかし、それはそれとして、概念や公式や解法を深く理解して、そこから多くのものを得ようとする心構えは大切です。

やや微妙な言い回しですが、解法を最初から暗記しようとすることと、理解した上で記憶しようとするのはずいぶん違います。この話題については『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』の第3章あたりで「僕」とテトラちゃんが話していたような記憶があります。

「数学ガール」シリーズや「数学ガールの秘密ノート」シリーズの中で、彼女たちがやっていることそのものが、あなたの求めていることに近いかもしれません。

彼女たちがやっていることは、数学の概念や数学の問題に立ち向かって……
・よく考えること
・わかったふりをしないこと
・質問をすること
・質問に答えること
・できるだけ理解し、納得を求めるけれど、それが得られなくてもしっかりと疑問をキープすること……

結城は、学ぶときの態度として《自分の理解に関心を持つ》というスローガンをいつも提示するようにしています。どんなものを見ても、何を考えても、必ず「私はこれを理解しているだろうか」と自問するのです。

もしも理解しているとしたら、自分は何ができてしかるべきだろうか。もしも理解していないとしたら、何をしたら理解できるだろうか。《自分の理解に関心を持つ》人は、自然とそのように考えるでしょう。常に、そのように《自分の理解に関心を持つ》態度でいることは非常に大事です。

しっかりと考えを進める人は、(自覚しているかしていないかはさておいて)必ず《自分の理解に関心を持つ》態度でいるはずです。「うーん、これを自分はまだ理解していないぞ」や「よしよし、ここまでは理解できたな」と心の中でつぶやいているはずです。それは《自分の理解に関心を持つ》からです。

もちろん、時間の都合で「わからん!いったんこれは暗記しちゃおう」という場合もあるでしょう。でもそのときでも「これについてはまだ自分は理解してない」フラグを立て、いつか理解してやるぞという気概を持つのは大切です。自分が理解しているかどうかをいいかげんに扱わないということです。

もしもあなたが《自分の理解に関心を持つ》という態度をしっかりと身につけることができたなら、大学入試がどうこうとか、数学がどうこうという狭い範囲に留まらない貴重な財産を手に入れたことになります。人生を豊かにしてくれる、一生ものの財産です。

私からの回答は以上です。ご質問ありがとうございました。

《自分の理解に関心を持つ》ということについては「数学セミナー」誌の巻頭コラム二回分の短い文章で書いたことがあります。こちらに「結城浩ミニ文庫」としてPDFにまとめてありますので、よろしければご購入ください。
https://mm.hyuki.net/n/nca5303eac345?magazine_key=m2e7fe2241e08

数学的な題材としては非常にやさしいものを使って、理解するとはどういうことか、意味とは何か、考えるために何をすればいいのか……という話題にもっとも接近しているのはこちらの本になると思います。未読ならばどうぞ。

数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話 | 結城浩 https://note12.hyuki.net/

>「解法暗記」を越えて、理解のための勉強はどうすればいいのか
https://rentwi.hyuki.net/?1349311638395002880

以下、関連する読み物をリンクします。

勉強が得意な生徒と苦手な生徒の違い(学ぶときの心がけ)|結城浩
https://mm.hyuki.net/n/nf7a5f26cc7e8

どうしたら「数学的思考力」を鍛えられるの?(学ぶときの心がけ)|結城浩
https://mm.hyuki.net/n/nff8a6bb727b5

『いかにして問題を解くか』との出会いについて(Q&A)|結城浩
https://mm.hyuki.net/n/n81e533cfe5bd

高校生の息子に「すごくいいこと書いてあるから読んで!読んで!」といっても読んでもらえないときにどうするか。
https://mm.hyuki.net/n/n1c23aa606dff#w5sf3

数学の勉強方法を教えてください
https://mm.hyuki.net/n/n673e8d263529#GeTtN

中高生が数学を学ぶ秘訣(教えるときの心がけ)|結城浩
https://mm.hyuki.net/n/nc378005c21dd

学校はもちろんのこと、生活や仕事の中にも「学ぶ」場面はたくさんあります。そんなときに心がけたいちょっとしたことを書いた文章を20本ほど集めたマガジンがこちらです。
https://mm.hyuki.net/m/m4e998a7b06c9

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2021-01-13 (Wed) 20:05:38